CHRONO DC

今では本格的にオフロードを走る方にとってはフルサスペンションが当たり前になりましたが、最初にMTBがマーケットへ出てきた時の仕様は前後リジットのバイクでした。
オフロードで気を遣うことなく全開で走ることができるヘビーデューティーさが売りで、何でも一台でこなせる万能感がありました。
実際、DHもXCのレースも一台のバイクでエントリーしていました。レースやゲレンデライドだけではなく、林道や藪漕ぎ(やぶこぎ)、トレイルライド、オンロードでロードバイク並みの距離を走ったりしたものです。
用途や競技に応じてカテゴリーが細分化され、どんどん先鋭化していきました。言い換えれば、性能が前に出過ぎてしまい、遊びの部分がどんどん削られていったのかもしれません。

ハードテイルはリアタイヤに適切な荷重をかけなければ、急なオフロードの上り坂を上ることができなかったりする不器用なバイクです。そうした『不具合』をスキルでカバーし、速く走ったり、タイヤをグリップさせたりする乗り物です。できなかったことができるようになる過程をも楽しむ道具だったのです。

進化してくる過程でハードテイルのフレームもスケルトン(ジオメトリ)、材質、チューブ肉厚、形状など随分改良が重ねられてきました。そのためフロントサスペンションだけでも、昔とはずいぶん違った乗り心地になっています。「前に出るわ、振動は少ないわ」、昔のMTBにアフターマーケットで購入したサスペンションを後付けしたものと比較するとよくわかるのですが全く違った乗り物になっています。ハードな使用に耐えるフレームに120mmのフロントサスがついていても昔のクロカンバイクと重量は左程変わりがありません。CHRONO DC、昔のMTBのスピリットに近いテイストを持っています。
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