「動かす方向でサスペンションの設定する」という理由

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今日は「最近のダンパーは何故LOW側を抑えてHIGH側を強く設定する」、言い換えると「動かす方向でサスペンションの設定する」という理由を構造に基づいた視点でお話します。

以前、減衰のLOW側はオイル通路の入り口の大きさを変え、流量を変えるというお話をしました。つまりLOW側を締め込むとサスペンションユニットの内部のオイルの流量が制限されることになります。リアサスペンションは左側の写真、赤い丸の内側のピストンに取り付けられたバルブリーフがピストンの穴を塞いでおり、衝撃を受けるとダンパーシャフトがダンパー内部に入り込む際、写真奥から手前に向かってオイルの流れが発生します。その流れがバルブリーフを押し上げ、オイルの通路を現出させます。バルブリーフの枚数が増えれば、押し上げて通路をつくりだすための力を大きくする必要があります。そこでエネルギーの変換が行われ、入力された衝撃は熱エネルギーとなります。ピストンの動きはその抵抗によって減速します。更に内部に入り込んだダンパーシャフトの容量分のオイルが加圧されたフローティング・ピストンを押し上げ、リザーバー側に流れ込みます。そこに流れ込む量を調整するのがLOW側のコンプレッション。その量が一気に増えるとリザーバー側に設けられた回路のバルブリーフを開くことで、更にエネルギーを変換します。そのバルブリーフの開くタイミングを入力の大きさによって変更する役目がHIGH側のコンプレションとなります。

減衰設定が強くなった最近のリアユニットはバルブリーフの枚数や厚み、ピストンの穴の大きさが従来の製品とは大きく異なっています。そのためダンパーシャフトが動きにくくなっているのです。入力の大きさに対してバルブリーフをビビットに反応させるためには、オイルの流量制限を最低限のレベルに設定する必要があります。大きな衝撃に対してはHIGH側の設定を強くすることでボトムを回避させます。これがLOW側を弱め、HIGH側を強めにしてくださいという根拠なのです。

初期入力が大きくなりがちな直押しのバイクは、リアショックのモデルによって対応方法は異なりますが、ピストンの穴の大きさやバルブリーフの枚数や厚みで対応しています。ダンパーシャフトに取り付けられたバルブリーフで減衰の基本特性を設定しているとお考え下さい。アフターマーケットで販売されているモデルは汎用性の高い設定になっています。

ここで述べている内容はFOXの製品についての説明となります。

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