ハンドリング特性とも密接な関係

サスペンションの役目は衝撃の緩和だけではありません。
ハンドリング特性とも密接な関係にあります。
例えば低速のコーナー。ブレーキングが必要になります。以前にもお話しましたが、MTBは物理法則に合わせるスポーツ。この場合、慣性の法則が働きますから、フロントサスが沈み込みます。この際にハンドリング特性の変化で減衰設定が上手くいっているのかどうかがわかります。もちろん大前提はサグが正確に設定されていることが必要です。
切れ込んでいくオーバーステアならLSC(ロー・スピード・コンプレッション)が不足しています。逆に思うように曲がらないアンダーステアならLSCが過剰な状態です。

ではどのように調整すればいいのか?一般的なレベルのライダーならば、LSCを調整すれば、ほとんどの場合、問題の解決に繋がります。ただしLSR(ロー・スピード・リバウンド)を強過ぎる設定にしていると、サスペンションが縮んだままになってしまうため、オーバーステアになり、切れ込んでしまうことになります。これを避けるためにもサグを正確に設定し、そこで得られた空気圧に合わせたリバウンド設定を、マニュアルを参照して頂き知ることが重要になってくるわけです。その設定とHSC 5 ・LSC 10を組み合わせた上で微調整をしていけば、あなたにとってベストな設定を得られることになります。

これが速いライダーになってくると、必ずしもそれが最適解ではなくなります。
LSCとHSC(ハイ・スピード・コンプレッション)の関係性については以前お話をいたしましたが、LSCでオイルの流量をコントロールしている状態を、エネルギー変換をした上で、そのコントロールを解除するタイミングを調整するのがHSCの役割だとお伝えいたしました。HSCを調整、タイミングを変化させて対応するのもありなのです。例えば、ハンドルが切れ込んでいってしまう原因が、早めにLSCがキャンセルされてしまうことに起因していれば、HSCを締め込めば解決できるわけです。オーバーホールに来るフロントフォークの設定でHSCはオープン、LSCは目一杯締め込んであるものを見かけますが、これは間違っています。HSCを5クリック戻しに設定すれば、LSCを緩めることができます。LSCを緩めることができれば、LSCで設定した硬さを維持したまま、ストロークすることができます。ストローク時のオイルの流量が増えるため、サスペンションは反応しやすくなります。

MONDRAKERを例にお話をします。レースに使用する目的であっても、サグはフロントを20%、リアを30%に設定してください。ヘッドアングルが寝ていますから、サグを多めにとることでフロントを反応しやすくしています。LSCも弱め、そのかわりHSCは強めにします。リアもLSCは弱め、HSCは普通の状態にセットします。前後サスペンション間での荷重移動をしやすくすることで、ロングホイールベースであっても曲げやすくなります。リアのHSCが弱めならば、ボトムしやすくなるのでは?心配は無用です。リンク特性によって、ストローク後半で機械的な踏ん張りを作り出しているため、弱めのHSCであっても、ボトムすることなく使用することができます。