高速側の減衰(HSCとHSR)の設定

年が明けても毎日オーバーホール依頼品が到着しています。
オーバーホールの作業をしていると、高速側の減衰(HSCとHSR)の設定が上手くできていない方が多いことに気が付きました。

基本的に低速側の減衰(LSCとLSR)はオイルの流量をコントロールしています。機械的な視点からするとオイルの流れる量が多ければ多いほど、ダンパーの機能は発揮しやすくなります。*注 バイク・コントロールのし易さとは必ずしも直結はしません。

ハンドルを勢いよく押してフロントフォークをストロークさせる。同様にサドルを介して体重を使ってリアショックを沈める。こうして体感できる設定、実は高速側の設定になっています。低速側はオイルの通過する穴の大きさを変えることによって設定しています。オイルの穴が小さくなれば、オイルが通過する時間が長くなり、リバウンドの場合は戻りに時間を要するようになり、コンプレッションは沈み込みの抵抗が大きくなります。

リバウンドもコンプレッションも高速側はオイルの通路を塞いでいるバルブリーフの開くタイミングを、プリロードを変化させることによって変更しています。このバルブリーフが開く際にエネルギー変換が行われ、入力された衝撃が熱エネルギーに変わっています。
高速側の設定が弱いと、折角低速側の調整によってオイルが通過する穴を小さくしても、その効果を発揮する前に、高速側のバルブリーフが開いてしまい、新たなオイルの通路が生まれ、低速側の設定が反映され難くなってしまうのです。
その結果、高速側の設定が弱いまま、体感できる程度まで低速側の設定を強くしてしまうのです。低速側が必要以上に強くなると、設計されている性能を発揮することができなくなります。
こうしたトラブルを避けるための指針がマニュアルにある基本設定です。その数値は、あなたにとって最善の設定を見つけるためのスタート地点とお考え下さい。

実際に役に立つ実践的な具体的な設定方法をお伝えします。
必ず走行しながら、その変化を体感することが重要です。静止した状態で設定を行いながら、理想の状態を見つけることは、質的にも量的にも余程の経験がなければ不可能です。

もっと効果が欲しい場合には低速側を1クリック締め込む。
逆に弱くしたいのなら低速側を1クリック緩める。
更に効果を欲するのなら、低速側を1クリック締め込む。
その逆であるのなら低速側を1クリック緩める。
まだまだ効果が欲しいのなら、高速側を1クリック締め込む。
逆であるのなら高速側を1クリック緩める。
このサイクルを繰り返していきます。
こんな感じかな?と思ったポイントが仮のゴールです。
少しでも強くなり過ぎたと思ったら、低速側を1クリック緩めてください。
少しでも弱くなりすぎたと感じたら、低速側を1クリック締め込んでください。
とにかく低速側のみを強くし過ぎないことが重要であることを意識してください。

ご要望があれば続けます。
「リアショック、高速側の設定調整の無いものはダンパーに予め設定されたバルブリーフに合わせた低速側の設定が重要です。」これについての解説になります。